5月24日の世界統合失調症デーに向けて
5月24日は世界統合失調症デーです。
私たちシルバーリボンジャパンは、この国際デーを多くの人に知ってもらいたいと切に願っています。
なぜなら、シルバーリボン運動の始まりは、統合失調症に起因しているからです。
シルバーリボン運動は、1993年に米国カルフォルニア州のニューポートビーチで産声を上げました。創始者のジーン・リーシティー氏は、自身の長男が統合失調症を患い、周囲の偏見に苦しめられたことから、統合失調症に対する正しい理解の促進と偏見の払拭を目的に手作りのシルバーのリボンを身近な人に配ったのがその始まりです。
それから30年経過した現在、精神疾患の情報は、インターネット等で入手しやすくなりました。
メディアなどでも取り上げられる機会は増えましたし、著名人が精神疾患を患っていたことをカミングアウトすることも珍しくありません。
そのように少しずつ社会の変化はみられてきてはいるものの、何故でしょうか。精神疾患に対する偏見がなくなっているようには感じられません。
SNSなどのメディアを介して、偏ったり誤ったりした情報も散見されることもありますし、先日NHKで取り上げられて大きな反響を呼んだ東京都の某病院のように、援助者が患者(当事者)を蔑ろにしていたといった事案もなくなりません。
何より、私たちシルバーリボンジャパンに対して、周囲からの偏見で苦しんできている旨を吐露する方々が相当数存在していることが、精神疾患に対するスティグマの存在を裏付けているように思います。
「メンタルヘルス」や「うつ(うつ病)」というフレーズは日常的に耳にする機会も増え、その言葉に対する抵抗感は一昔より和らいでいるかも知れません。(もちろんそれらに対する誤解や偏見が完全になくなっているとは言い難いですが)
また、メンタルヘルスというフレーズは、精神的な健康を保つ(精神疾患を患う前段階の予防やケア的な)意味合いで使用されていることも多いかと思います。
それ自体は決して悪いことではありませんが、精神疾患を患ったからといって、必ずしもそれが不幸という訳ではありません。
また、精神疾患の予防的な観点が強すぎて、精神疾患を患ってはならないといった傾向が強まれば、かえってスティグマを助長することにもなりかねないと留意する必要もあると思います。
精神疾患を体験して、確かにつらく苦しい思いを長年味わってきながらも、その体験を経た後に、前向きな生活を送っている人はいます。
また、病気を体験したからこそ、より人生の深みが増した、何気ない日常の有難みが分かった、人に対して優しくなれたとのように、人間的な成長を得られたと、その経験を肯定的に捉えている人もいます。
私たちは、精神疾患を患っても、前向きに充実した日々を過ごせるような社会を実現させたいと心から願っており、そのためには、精神疾患が正しく理解され、偏見がなくなっていく必要があると考えています。
病気そのものの苦しみに以外に、誤解、無理解、偏見といった苦しみが加わることは、回復への大きな障壁になります。また、誤解、無理解、偏見からもたらされる苦しみは、当事者だけでなく、家族や身近な人にも向けられることもあります。
その状態像は決して望ましいことではない。だからこそ私たちシルバーリボンジャパンは、スティグマをなくすためのソーシャルアクションをこれまでも展開してきており、スティグマが存在する限りこれからも継続していきます。
冒頭の統合失調症の話題に戻します。
精神神経疾患に位置付けられる疾患の中でも、一番ネガティブな印象を持たれやすく、偏見にさらされることが多いのは統合失調症だと言われています。100人に1人が発病するという、身近な病気であるにもかかわらずに。
統合失調症の当事者、統合失調症の当事者家族、統合失調症の当事者を支える援助者・学識者のメンバーからなる私たちシルバーリボンジャパンだからこそ、5月24日は世界統合失調症デーだと多くの人に知っていただき、統合失調症が正しく理解されていくよう心から願っています。
特定非営利活動法人シルバーリボンジャパン
代表 関 茂樹