お知らせ

事務局から

~ 2024年の世界統合失調症デーに向けて ~

2002年8月26日、横浜の地で開催された日本精神神経学会の総会において、「精神分裂病」という病名を「統合失調症」と改めることが正式に承認され、社会的にも統合失調症の日本語呼称が用いられることとなった。

 

病名に対する誤解や偏見をなくしていくことが、名称変更の最大の理由となる。


統合失調症と名称が変更されてから22年、当初の目的どおりに誤解や偏見はなくなっているだろうか。残念ながら、誤解や偏見は世間に根強く存在し続けていることを否定することはできない。


しかし、そのようなスティグマにさらされながらも耐え忍ぶ人たち、抗おうと声を上げ、行動する人たちは存在する。そしてそのような人たちの存在こそが、我々の活動の原動力となり、活動する上での推進力にもなっている。


以下に統合失調症に対する我々の考えを記述したい。

 

・統合失調症は珍しい病ではなく、誰がなっても不思議ではない。

・統合失調症の闘病は辛く厳しくも、リカバリーすることができる。

・統合失調症になったからと言って、幸せになれないということはない。

 

そして、統合失調症に対するスティグマに耐え忍ぶ人たちの負担を軽減させるために、「啓発活動」は必要不可欠だと考えている。


スティグマを払拭するための啓発活動について、少し触れたいと思う。

 

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啓発活動とは、奇妙な表現ですが、非常に「禁欲的な活動」なのだと思います。

 

人は誰しも、たとえそれがどれほど正しい知識や理解であるとしても、他人から無理矢理教え込まれたりすることには反発を覚えるだけだからです。


そのため、啓発活動それ自体は、厳選した最小限のメッセージだけをじっくり時間をかけて繰り返し伝えながら、これまでの偏見に少しでも揺さぶりをかけていく地道な活動にすぎないともいえます。


あくまでも世代を越えた重みある偏見が相手なのだということを片時も忘れることは許されません。

 

決して欲張るわけにはいかないという謙虚な禁欲的態度と、しかし、だからといってあきらめたり投げ出すわけにもいかないという覚悟にも似た粘り強さとが必要です。


とりわけ、歴史的といってもよいほどの重い偏見を前にするときには、身を削る謙虚さと、あきれるほどの粘り強さとを持ち続けることがどれほど大切であるかということを、まさに自戒を込めて、思い知らされることがあります。=(稲沢 公一)

 

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上記は私の師の文献から転載したものである。私が精神保健医療福祉分野における普及啓発活動に携わるようになってから、17年程経過した。17年という年月において、普及啓発による成果かは分かりかねるが、少しずつ社会の変化を感じられるものもある。


私個人の肌感覚となるが、例えば精神疾患という言葉に対する社会からのアレルギー反応は軽減しているように思う。しかし精神疾患・精神障害に対する偏見や差別は軽減されているだろうか。おそらく精神保健医療福祉に携わる者であれば、躊躇なく頷くことはできないだろう。


上述した偏見や差別は、時代を越え、地域(国境)をも越え、時に人の命をも奪いながら、今なお存在し続けている。


その強大な問題に対峙して、私自身、己の無力さを幾度も痛感してきた。自身が当事者である故に、不本意ながら社会経験が乏しく、人脈も経済的な余裕もない。そのような若輩者が挑むには大きすぎる問題であった。


しかし17年という年月において、諦めず粘り強く活動を継続してきた結果、得られたものがある。同じ問題意識や目的を抱く協力者たちの存在である。そしてそれこそが偏見や差別に挑む上での不可欠な財産となっている。

 

今後も禁欲的な活動を実践して来られた方々と共に、「統合失調症」に対するスティグマをなくしていくための取り組みを、試行錯誤しながらも粘り強く実践していきたいと思う。

 

特定非営利活動法人シルバーリボンジャパン
代表 関 茂樹


※写真は統合失調症の名称が生まれた横浜の地にある、シルバーリボンデッキからの風景